遅くなりましたが、めぐろパーシモンホールで観劇いたしました 松竹大歌舞伎「魚屋宗五郎」「京人形」の感想などを書かせていただきます。
○「魚屋宗五郎」は黙阿弥作、1883年(M16)初演の「新皿屋舗月雨暈」の中の二幕目と三幕目にあたります。
幕開きの舞台で展開するお話しになる前に 通しの「新皿屋舗月雨暈」では、序幕で磯部邸でのお蔦のお話が語られます。
今回上演される「魚屋宗五郎」で、おなぎが宗五郎一家に話す内容が舞台になっているのです。
今回は「魚屋宗五郎内」「磯部邸玄関先」「磯部邸庭先」の上演となります。
また、松竹大歌舞伎という事で あちこちのホールで上演されます。
私が見にまいりましたのは ‘めぐろパーシモンホール 大ホール‘です。
大勢の観客で、思っておりましたよりテンションが高く 掛け声もたくさん掛かり 雰囲気はとても良かったです。
舞台の方も、思っておりましたより見応えのある大舞台でした。
ですが やはり、ホールでございますので 音があまり良くございませんでした。
下座の音が‘ぼわ〜‘っと聞こえました。
幕開き 舞台は宗五郎の家 亡くなったお蔦のために菊茶屋女房・おみつと娘・おしげが宗五郎の家を訪ねているところから始まります。
ここは芝雀丈・おはまと京蔵丈・おみつの世話な雰囲気が良いです。
特に、芝雀丈の細かい段取りが自然で良いです。
三津五郎丈・宗五郎は花道からの出で 鳶の吉五郎・巳之助丈とのチョッとした話の後に舞台に上がります。
ここの三津五郎丈・宗五郎は 真面目でしっかり者の雰囲気がございまして 三津五郎丈らしい宗五郎だと思いました。
ホールですので花道がスゴク短くて、位置も端っこですが 1階席ですのでとても良く見えて嬉しかったです。(^^ゞ
舞台に上がってからも 三津五郎丈の宗五郎は‘分別のある人‘の感じですが とりわけて優しい雰囲気があると思いました。
三津五郎丈の宗五郎は 三吉も含めて、家族に優しいです。
たぶん台詞の感じだと思うのですが 「送るもんじゃねえ」と言う台詞なども注意を促すという感じではなく もっと情を感じる台詞になっています。
さらに、これに答える芝雀丈・おはまの「そうだったね」の台詞が スゴク自然です。
何と申しましょうか 悲しい事を共有している心情の連帯感のようなものがあるように感じました。
京蔵丈・おみつがこの場を去ると 上手側の奥の座敷から市蔵丈・太兵衛の出になります。
さすがに、歳の若い感じはございましたが 老けの雰囲気は良いと思いました。
無理に老けを意識しないと申しましょうか 加減があり、自然に老けの雰囲気を出していたと思います。
舞台に皆が揃ったところで酒屋の丁稚が登場 その後、萬次郎丈・おなぎが花道からの出になります。
初め‘だれ?‘っと思ったのですが 萬次郎丈だと分かり、何だか嬉しくなりました。
チョッと貫禄を感じるおなぎですが 旗本に仕えている品がございます。
‘ホール‘での上演ですが 舞台には良い役者さんが揃っているな〜 っと、思いました。
いよいよ宗五郎が酒に手を出すことになるのですが 何回見ても、この舞台は下座が活きている舞台だと思います。
ここの西行桜合方が好きです。
舞台を視覚で見ると申しますより ここは舞台を聞いてしまいます。
飲み始めは、特に神棚に会釈は無かったようでした。
飲んでいる時の酒の進み具合、変化の上手さもさることながら 止める芝雀丈・おはまと亀寿丈・三吉を肘で払うところ 角樽で払うところ お三人の息がぴったりでとても良いです。
酔ってからの三津五郎丈・宗五郎 「お〜お〜、なんだって殺しやがった」って、台詞に泣けてきました。
特別に何があるわけでもなかったのですが グッとこらえる感じで、これまで抑えていた想いがこみ上げてくるのが伝わります。
あ〜、きっと妹を思い出しているんだろうな〜 っと、思えて泣けてくるのです。
ハラがあると言うのでしょうね 内側からジワッと見えてくるようです。
酔う前の落ち着いて思慮分別のある また、三津五郎丈の宗五郎ならではの真面目さがしっかりと見えていたので より悲しさとか悔しさとかを抑えていたのだろうな っと、感じます。
幕切れ前は 三津五郎丈・宗五郎が角樽を振り上げて引っ込みになりますが 端っこにチョッとだけの花道ですが、決まった姿がとても大きいです。
芝雀丈・おはまが良いです。
タイミングと申しましょうか、間がとても良くて さらに、細かい気遣いが自然で 押し付けがましくない、ちょうどの世話女房です。
世話物の舞台は細かいところがきちんと見えて かつ、自然に見えないと ‘らしく‘見えないのだな〜 っと、改めて感じました。
家を飛び出した宗五郎を追いかけて行くおはまですが ここの芝雀丈、宗五郎への心配ももちろんですが ‘何とかしなくちゃ‘っと、言うような勢いがあり 次に繋ぐエネルギーがあって良いと思いました。
亀寿丈・三吉は大健闘でした。
時代物と違って硬い型があるわけではございませんし 何かと段取りも多い舞台だと思うのですが、頑張っていらっしゃったと思います。
こういう舞台は 自然にという意味合いで、‘慣れ‘も大事だと思うので まだ、多少たどたどしい感じもございましたので これから慣れて欲しいと思いました。
役者さん5人のピッタリ合った息で 舞台が盛り上がるのが分かりました。
アンサンブルのとても良い舞台だと思います。
後半、舞台は磯部屋敷になります。
三津五郎丈・宗五郎、前後不覚に酔っているのですが どうしても言ってやりたい、やるせない心情がじわっと伝わります。
「酔って言うんじゃございませんが」からの台詞が、酔っていてもしみじみとして 宗五郎のまっさらな心底から出てくる言葉だと思えます。
聞いていて切なくなります。
楽しい時があったんだろうな〜 それなのに、どうしてこんなことになっちゃったんだろう っと、いうような感じです。
技巧的なことではなく、しっかり宗五郎になっているから伝わる心情かと思います。
芝雀丈・おはまは、花道からの出で 宗五郎の行状を詫びる「お許しくださいませ」の台詞に情があり 宗五郎を気遣う気持ちがしっかりと伝わります。
また 宗五郎を案じる想いが自然に見えてきて良いと思いました。
気遣いがあり なにより暖かみを感じます。
彦三郎丈・浦戸十左衛門 さすがに大きくて十分な篤みです。
下座の大太鼓で繋いで、次の幕「庭先の場」に代わります。
酔いの覚めた三津五郎丈・宗五郎 微笑ましくはございますが、けしてコミカルではなく こういうところの三津五郎丈の加減が好きだったりいたします。
また、ここでも芝雀丈・おはまの何気ない優しさや世話女房のピリッとした感じなどが‘普通に‘見えてくるのが良いです。
彦三郎丈・十左衛門は大きく 舞台を篤くしています。
秀調丈・磯部主計之助は品がございます。
多少、台詞に想いを感じないと申しましょか 一本調子と申しましょうか そんな感じもいたしました。
ですが それだからでしょうか、上から目線な「堅固で暮らせ」の台詞が活きていました。(^^ゞ
それから 橘太郎丈と緑三郎丈、優しい雰囲気があって良かったです。
全体には、思っておりましたより大きな舞台で とても面白かったです。
空間的には恵まれてはおりませんけれど舞台は充実した舞台でした。
1階席で観劇できたのも良かったです。(^。^)
○「京人形」は1847年初演 常磐津と長唄の掛合の舞台です。
この舞台は、のんびりと見てしまいました。
幕開きは甚五郎の家 三津五郎丈・左甚五郎は花道からの出、舞台の方は萬次郎丈・おとくの出になります。
この舞台は常磐津と長唄の掛け合いの舞台なので 萬次郎丈・おとくが舞台奥に入ったところで 下手に常磐津、3挺3枚 余所事浄瑠璃の風情で聞こえてきます。
舞台は三津五郎丈・甚五郎だけになり 上手に長唄雛壇4挺4枚 常磐津、長唄が出そろって双方の掛け合いになり ドロドロドロの下座で 京人形の木箱の蓋が開きます。
芝雀丈・京人形の精が箱から出てきた時に客席から‘わ〜‘っと声が聞こえました。
京人形の精なので艶っぽさはそれほどでもございませんが、可愛かったです。
ここの芝雀丈の京人形は 男の仕草で踊り始めると申しますより、人形を意識しているようで所作がカクカクしていて 太夫の鏡を持つと柔らかな踊りになります。
チョッとパントマイムのようで これはこれで、踊り分けが面白いと思います。
また 三津五郎丈と芝雀丈、お二人の息が合っていたと思います。
この後、井筒姫の件になります。
亀寿丈・栗山大蔵 若い感じが出ていまして・・・まあ、お若いので当然ですが(笑)・・・重みはともかく、勢いを感じます。
市蔵丈・奴照平は安心して見ていられました。(^^ゞ
巳之助丈・井筒姫は まだ、全体に硬い感じはございましたが 見た目がとても綺麗で可愛いです。
井筒姫と奴照平がこの場を去ると ここから所作立てになります。
一つひとつが見ていて分かりやすいと申しましょうか 綺麗に決まる感じです。
ここの所作立ては、大工道具を使った面白い所作立てですが 奇を衒うようなことではなく、決まったところをきちっと見せていくようでした。
全体には 三津五郎丈・甚五郎はキッパリと気分の良くなる所作 芝雀丈・京人形の精は、カクカクとした所作と柔らかい所作と踊りわけが面白いと思いました。
さらに、とっても綺麗です。(^^ゞ
それほど長時間の舞台ではございませんが やはり、萬次郎丈・おとくや市蔵丈・奴照平が舞台に篤みを出していると思いました。


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